太く長く活躍している人・組織に共通していること
皆様こんにちは、坂めぐみ(めぐ)です。
この度は当ブログにお立ち寄り下さりありがとうございます。
しばらくブログから離れてしまいましたが、その間に新しい店舗を有楽町にオープンする等たくさんの事業に関わるプロジェクトを進行してまいりました。
既にオープンしている人形町の店舗もお陰様でご好評を頂いております。
改めて経営やビジネスの世界で勝負できることの楽しさを噛みしめております。
【やりたいこと】を【やりたい時】に【やりたい人】と【やる】、これが本当の自由の形だなと最近つくづく感じております。
気になるニュース
さて、このブログを執筆している現在(2018年12月13日)にはたくさんのニュースがありました。
東京丸の内や八重洲でのミーティングの合間に私は新聞に目を通すことが多いのですが、日産ゴーンさんの再逮捕があったり、HUAWEIのCFOがカナダで逮捕され「ファーウェイショック」と言われるほど日経平均株価が大幅に下落するなど印象的なニュースが世界中を駆け巡りました。
新聞の他にもWorld Business Satellite が好きでよく情報収集しております。
その中で私が注目したニュースは、武田薬品工業によるアイルランド製薬大手シャイアーの買収です。12月5日、それぞれの臨時株主総会で武田薬品工業によるシャイアー買収の承認がなされました。
買収総額は460億ポンド(約6兆6,000億円)と日本企業で過去最高額とのことです。
買収後の連結売上高(単純合算)で3兆5,000億円となり世界8位の製薬会社になる見込みです。
ちなみにこの買収プロジェクトのコードネームは「Yamazaki」と「Hibiki」だったそうです。
シャイアーの本社がウィスキー発祥の地アイルランドで、そこから両社を国産老舗ウィスキー代表格「山崎」と「響」になぞらえプロジェクトを極秘裏に進めていたそうです。
私は薬品関係の事業を立ち上げているわけでも、今後立ち上げる予定も今のところありません。
また株式を所有しているわけでもありません。
ではなぜ私が今回このニュースに興味を持ったのかと言うと、武田薬品工業の戦略でした。
その戦略とは端的に言ってしまうと「継続的な新規開拓」ということだと私は読み取りました。
長期的に太く活躍されている人や組織はすべからく「新規開拓」の重要性を体現していると私は感じております。
「ファイザーモデル」
今回の武田薬品工業の大型買収は世界の製薬業界では周回遅れともいえる大型再編だったそうです。
世界の製薬業界のトレンドは、自社で新薬開発を優先するよりも有望な新薬のタネを持つ創薬スタートアップ企業を買収するケースが主流でした。
ちなみに新薬創出の確率は三万分の一だそうです。2018年10月1日に京都大高等研究院の特別教授である本庶佑(ほんじょたすく)教授が、免疫を抑制する効果をもつ「PD-1」という分子を発見した功績によりノーベル生理学・医学賞を受賞したことが記憶に新しいかと思います。PD-1を標的にした抗がん剤「オプジーボ」がすでに小野薬品工業によって開発されていますが、その開発もとてつもない確率の上に成立しているんですね。
少し話が逸れましたが、創薬スタートアップ企業を買収するM&A(合併&買収)は1990~2000年代に多く、敵対的な買収も含めてファイザーが多用したことから「ファイザーモデル」と言われているそうです。
ファイザーは2000年の買収を皮切りにM&Aを繰り返し、総額30兆円規模の買収金額を投じました。
その結果ファイザーの売上高は2017年12月期で約5兆9,000億円と、M&Aを開始する前の2000年以前の約2倍に拡大しました。これはある意味足し算を繰り返してきたので当然の結果かなとも思います。
一方で足元の時価総額(会社の今の売却価値・投資家が思う企業価値)は約30兆円で、2000年末から約1割減少しています。
一生懸命事業拡大してきたにも関わらず、企業の価値はかえって下がってしまったのです。
買収した企業の医薬品の特許が切れれば、新たな企業の買収を繰り返す「ファイザーモデル」。買収後の企業価値が向上しなかったのは、端的に収益力の高い新薬の開発を達成できなかったからではないでしょうか。買収に注力した結果、中長期的な研究開発の底力が養われていなかったのではないかと推察されます。
ここで武田薬品工業が大型買収に動いた理由に下記があると言われています。
それは「収益力の獲得」そして「開発力の強化」です。
シャイアーは希少疾患治療薬に強みをもち、2017年12月期の純利益は約4,700億円と武田薬品工業の2018年3月期実績の2.5倍の水準の高収益企業だそうです。とりわけ血液から作る血液製剤は特許に縛られず、今後も安定的に収益を稼ぎ出すそうです。
一方、武田薬品工業は2000年代後半に糖尿病治療薬などの大型薬が相次ぎ特許切れし、収益力が低下しました。それ以降も新薬に恵まれていません。
武田は買収したシャイアーが収益を稼ぐ間に、新薬を生み出す研究開発力にてこを入れる戦略です。両社の研究開発機能を融合するとともに、抗がん剤などの開発の中心をバイオテクノロジー分野で技術革新が相次ぐ米国に移すそうです。
M&Aで巨大化しても新薬を生み出せない「ファイザーモデル」のワナに陥らないためにも、自前の創薬力の再生を念頭においた買収戦略といえるでしょう。
シャイアーの買収にはグローバル化(アメリカ化)を達成して生き残りをかける戦略もあるかと思いますが、新しいものを生み出すこと(新規開拓)を念頭に置いた戦略に私は好印象を持ちました。
「新規開拓」こそ太く長く活躍する原因
大型買収を受けて財務悪化の懸念から武田薬品工業の株価は買収発表以後下がっておりますが(13日終値は前日比262円の上昇)、新規開拓つまり新薬開発に注力する武田薬品工業の将来は、比較的明るいものになる可能性があると私個人は思っております。
武田薬品工業の買収の事例を扱って書いてきましたが、経営・ビジネス、ひいては人生において長く繁栄するには「新規開拓」が必須だと考えております。
「そんな当たり前のことを」と思われる方も多いかもしれませんが、一度築いた成功やビジネスモデル、人間関係に固執せず新しい挑戦を行うことは頭で理解していてもなかなか出来ないのが実情ではないでしょうか。
創業237年の武田薬品工業のようにいつになっても「新規開拓」を続ける人・組織が長期的に活躍していくのだと私は思います。
だからこそ私も新しい店舗のオープンや新しい法人様との取引の交渉や新しいネットワークの構築、お客様に喜んで頂けるサービスを常に実現していくと決めています。
人には現状を維持しようとする力「恒常性(ホメオスタシス)」が働くことも理解しております。
それでも時間は平等に過ぎていき陳腐化の脅威に常に晒されています。
本当に今の状態を維持したいのであればこそ、常に変化し新規開拓を実行していく必要があると思っています。